空間情報技術の進化とその先にある未来

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私たちが暮らすこの社会は、目には見えにくい多くの「位置」や「空間」に関する情報によって支えられています。これらを可視化・分析・活用する技術は、かつては地道な測量作業から始まりましたが、現在では衛星技術や情報システムと連携し、「デジタルツイン」という高度な都市の再現技術へと発展を遂げているようです。


すべては「測る」ことから始まった

古代より人類は、地球の形や位置を知ろうと試みてきました。天体観測から始まり、緯度・経度の測定、地図の作成、距離や高さの測量など、精度の向上とともに空間情報の「測る」技術は発展を重ねてきました。

近代になると、回転楕円体としての地球モデルや、重力の影響を考慮した「ジオイド」といった概念が登場し、測量はより科学的な裏付けをもつようになりました。そして21世紀に入ると、GNSS(衛星測位システム)の普及により、私たちは地球上のどこにいても瞬時に自分の位置を知ることができるようになりました。

これにより、地球全体を対象とした「正確な位置情報の取得」が可能となり、「測る」技術はある意味で完成の域に達したと言えるかもしれません。


地理情報システム(GIS)の登場

測る技術が確立されると、次はそれを「活用する」段階に移ります。その中心にあるのが「地理情報システム(GIS)」です。GISは、位置情報をもつデータを統合的に管理し、分析・可視化・意思決定に活かすための仕組みです。

1990年代以降、災害対策や都市計画、環境保全などの分野で活用が進み、現在では自治体や企業、教育現場などにも広がっています。

このシステムの力は、「空間参照系」という共通の座標基盤を用いることで、異なる種類の情報をひとつの地図上に重ね合わせることができる点にあります。たとえば、災害リスクと土地利用情報を重ねることで、リスクの高いエリアと住民の分布を一目で把握することが可能になります。

また、GISは可視化だけでなく、将来予測や統計処理、地域資源の最適配置といった「考えるための道具」としても活躍しています。

デジタルツインによる3D都市モデルの実装

さらに最近では、「社会を変える」ための実装として、3D都市モデルが注目されています。

これは、都市の建物や道路、地形などを3次元で再現したデジタル空間であり、単なる地図以上の情報を内包しています。位置や形状だけでなく、「建物の構造」「築年」「階数」「用途」など、多様な属性情報をもった都市オブジェクトの集合体として整備されています。

こうした3D都市モデルは、都市政策の立案やインフラ整備の検討、防災計画の作成、さらにはカーボンニュートラルのシミュレーションまで、実に多彩な分野で活用されています。まさに「現実の都市を再構築するデジタルの鏡像(デジタルツイン)」としての役割を果たしているのです。


PLATEAUコンソーシアムに期待

3D都市モデルの整備・活用を推進しているのが、国の主導する「PLATEAU」です。特筆すべきは、行政だけでなく、企業や大学、地域住民といった多様なプレイヤーが協力し合う「PLATEAUコンソーシアム」が存在することです。

この共創の場では、都市の課題を現実のものとして捉え、それをデジタルで再構築し、さらに未来に向けた施策の試行と改善が繰り返されています。

空間情報を「測り」、それを「活用し」、そして「社会を変えていく」──その最前線に立つのが、いままさに動き出している3D都市モデルの世界です。

この流れがより多くの人に広がり、より多くの地域や都市に恩恵をもたらしていくことを、心から期待しています。

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