─ AI時代の情報との向き合い方を考える
SNSを開けば、毎日何かしらの「すごい話」が飛び込んできます。
それは、最新のテクノロジーかもしれませんし、驚くような科学的発見かもしれません。多くはショッキングで、感情に強く訴えてきます。
私たちは今、「何を信じればいいのか分からない時代」に生きています。
そしてその中には、意図的に誤解を招くように作られた情報や、事実に見えて実は根拠のない話が少なくありません。
そんなあふれすぎた情報の中で、私たちに必要なのは、高度な技術でも専門知識でもありません。必要なのは、ただ一つ──
「一瞬立ち止まって確かめる」という習慣です。
SNS情報は「感情を動かす」ために作られている
SNSでは、特にバズる投稿にはある共通点があります。それは、人の感情を強く刺激することです。
- 驚き/怒り/不安/希望/陰謀感
こうした感情を動かす情報は、アルゴリズムによって拡散されやすくなっています。そして、再生数や「いいね」、広告収益などにもつながるため、投稿する側も自然と“刺さる表現”を求める傾向が強まります。
その結果、「話題性」や「拡散力」が重視され、「正確性」や「根拠」は後回しになりがちです。
つまり、私たちが日常的に触れている情報の多くは、事実であるかどうか以前に、「感情を動かすための情報」だということをまず認識する必要があります。
大切なのは、「一瞬立ち止まる」思考習慣
そんな環境にあって、私たちが今すぐできる、もっとも効果的な行動があります。それが、「一瞬立ち止まって確かめる」という習慣です。たとえば、こんなふうに問いかけてみましょう:
- 「この話は、本当に事実なのだろうか?」
- 「出典はどこにある? 誰が言っている?」
- 「ほかの信頼できる情報源も同じことを言っているか?」
たった数秒でも立ち止まって考えるだけで、感情に流されるリスクを大きく減らせます。
AIは「調査のパートナー」
今は誰でも無料で使えるAIツール(ChatGPTやGeminiなど)があります。これらは情報を確かめる強力な味方になりますが、注意すべきことがあります。
それは、AIは「正解を決める存在」ではないということ。あくまで、自分で確かめるための補助ツールとして使うべきです。
たとえば、SNSで話題になっている内容に疑問を持ったら、AIにこう尋ねてみてください:
「○○という話があるのですが、これは信頼できますか? 可能であれば出典も教えてください。」
AIは、過去の情報や公的機関・報道機関のデータをもとに、一定の根拠を提示してくれます。これをスタートにして、さらに複数の情報源を照らし合わせることができます。
「SNS + ガバナンス + 利用者」という三位一体
情報環境をより健全にするためには、以下の三者がそれぞれの役割を果たす必要があります。
1. SNSプラットフォーム
誤情報の拡散を防ぐ設計や、透明なアルゴリズム、ファクトチェックの仕組みづくりはしています。でもSNSプロバイダーが完全に偽情報の拡散を止めきれないのは、技術的に不可能だからではなく、「誰が真実を決めるのか」という政治的・倫理的・経済的な問題が絡んでいるからです。
2. ガバナンス(第三者機関)
中立性と自由を尊重しつつ、フェイクニュースや悪質なデマに対するルールを整備。信頼できるファクトチェックサイトを活用する。
3. 私たち利用者
安易な拡散を避け、「これは本当か?」と自問する習慣を持つこと。特に「感情を煽る情報」は要注意。怒り・恐怖・驚き・陰謀などを強く煽る投稿は、情報より“反応”を狙っていることが多いです。感情が揺さぶられた時こそ、「誰がこの感情を利用しているのか?」を自問しましょう。
特に利用者である私たちは、最前線に立っています。ただの受け手ではなく、「拡散する/しない」「信じる/疑う」を選ぶ存在だからこそ、情報社会の“共同管理者”としての意識が重要です。
今すぐできる5つのファクトチェック習慣
以下は、誰でも日常生活の中で実践できるシンプルな行動です:
- 出典を確認する:信頼できるメディア、専門家、研究機関か?
- 画像検索などを使う:その画像が過去に別の件で使われていないか?
- ファクトチェックサイトを活用する:
例)FIJ、AFP、BuzzFeed、Snopesなど。 - AIに聞いてみる:
「この話は信頼できるか? 出典は?」と尋ねる習慣を持つ。 - 安易に拡散しない:少しでも迷いがあったらシェアしない、という判断が社会を守る。
情報は、私たち自身の「習慣」で磨かれる
テクノロジーがどれだけ進化しても、「正しい情報」とは自動的に提供されるものではありません。
むしろ、それを受け取る側の日常的な習慣や姿勢によって情報空間の質が決まるのです。
「一瞬立ち止まる」
その小さな行動が、民主主義を支える土台になります。
ファクトチェックは、誰か専門家だけがやるものではありません。私たち全員が担うことができる、日常の知的マナーです。
SNSを使う一人として、社会を構成する一員として、正しい情報との向き合い方を習慣にしていきましょう。それは、“テクノロジーに使われる社会”から、“テクノロジーを使いこなす社会”への一歩です。


