【コラム】AIは話し相手になる。でも、友達との違いはどこにある?

コラム

「答え」より「話し相手」がほしいとき

たとえば、友達に言う前に、気持ちを言葉にしてみたい。好きな物語の登場人物と会話してみたい。これは想像上の場面ですが、AIを使う理由は、宿題を早く終えることだけではありません。今回は、AIとの会話が私たちの人間関係にどんな新しい場所をつくるのかを考えます。

長く使う人を、平均だけで見ない

9月30日付で公開されたFindmykidsの企業調査は、同社の見守りアプリを使う米国の9~17歳の端末データを集計しています。2026年9月の比較期間は7~13日。架空の人物などと会話する「ロールプレイAI」のアプリが入っていた割合は8.7%でした。米国の子ども全体を無作為に選んだ調査ではありません。

同社が示す利用時間は、1日平均93分、中央値48分。中央値とは、時間の順に並べたときの真ん中の値です。平均が中央値の約1.94倍になることを計算しました。長い時間使う側の値が平均を押し上げていると考えられますが、元データがないため、何人が何時間使ったかまでは分かりません。

また、平日の平均89分に対して週末は103分。差は14分、平日を基準にすると約16%増です。これは公表された集計値の再計算で、個人ごとの分析ではありません。長く使う理由が楽しさなのか、悩みなのか、この数字からは決められません。

会話の用途は一つではない

別の角度から見る資料もあります。Pew Research Centerが2025年9~10月に米国の13~17歳と保護者を調べた結果では、若者の16%がAIとの雑談、12%が気持ちの支えや助言を得るためにチャットボットを使ったと答えました。これは本人の回答であり、先ほどの端末記録とは年齢も測り方も異なります。数字を足したり、増減として比べたりはできません。

一方、Children and Screensが10月に公開した研究紹介は、人間らしいAIへの愛着に伴うリスクを指摘しています。会話が楽しいという利用者側の経験と、関係への影響を心配する研究側の視点。その両方を、単純な「便利」「危険」の二択に押し込めずに考える必要があります。

気持ちは本物でも、関係は同じではない

アイデシック研究所がここで注目するのは、会話の中で相手と自分の違いに出会う経験です。友達には友達の予定や好みがあります。返事が遅れたり、意見が合わなかったりすることもある。その違いを受け止め、距離を調整することも、人間関係をつくる一部です。

AIとの会話で安心した気持ちまで、偽物だと片づける必要はありません。ただし、その安心感があることと、相手が人間と同じようにこちらを気遣い、自分の生活を持っていることは別です。会話の相手に感じられても、AIの返答は製品の設計や運営の方針に左右されます。

たとえば、AIに気持ちを整理してもらい、その後で友達に話す使い方は、人との関係を支えるかもしれません。逆に、自分の希望に沿う返事だけに慣れれば、他人との食い違いが以前より面倒に感じられるかもしれません。いずれも今回の数字が証明した結果ではなく、確かめるべき別々の可能性です。

調査では人数、欠測や集計の重みの詳しい説明が確認できず、孤独感や友情の変化も測っていません。日本の高校生にそのまま当てはめたり、利用時間から依存を判断したりすることはできません。

AIと話す時間が増えたかどうかだけでなく、その後、人と話すときに何が変わるのか。自分の言葉が見つかるのか、それとも違う意見を避けたくなるのか。「いつでも返事が来ること」と「違いを残したまま付き合えること」の間に、人間関係を考える新しい窓があります。